ここで新たな記号がいろいろ導入される。
利潤を最大化する\(p\)を\(p^*\)で表す。
結論からいくと、
$$p_t^*=\left[ \frac { \hat E (a_t:δ_t)} { g^* q_t} \right] ^ {1/η} $$
ここで、\( g^* \)はある方程式の解(の一つ)である。\( \hat E(x:δ) \)はある確立変数\(x\)の情報\(δ\)のもとでの期待値である。
まず、賃金費用はt期よりもτ期前に決定されているから定数であることに注目する。すなわち予測利潤は、
\( \hat E (p_t y_t – w_{t-τ} n_{t-τ}) = \hat E(p_t y_t) -w_{t-τ} n_{t-τ} \)
であるが、\(w_{t-τ} n_{t-τ}\)の部分は変化しない定数である(テキストでは、wnはすでに埋没してしまった費用と説明されている)ので、\( \hat E (p_t y_t) \)を最大にするpを求める問題に帰着する。
\( \hat E (p_t y_t) \)はt期だけに関する式であるから、添字のtは以下省略する。
結論までの数式を示すのはテキストの付録を見ればわかるようにかなり長い。付録の前半部分で説明されていることと重複するが、まず単純な活発度aの予想誤差がない場合を考える。
この場合は、\(g^*=1\)の時で、 \( p_t^*= (\frac{\hat E (a_t)} {q_t})^{1/η} \)となるはずである。
これに関しては、それぞれの変数の意味を考えれば微分せずとも導きだせる。
なぜなら、今η>1を前提にしているが、これはどういうことかというと、価格を高くして販売数を減らすよりも、価格を抑えてできるだけ販売数を増やしたほうが利潤が大きくなることを示しているからだ。
つまり、η>1を前提にしているということは薄利多売戦略を前提にしていることになる。しかし、製品はすでにτ期前に計画された分しか製造されないため、販売数には上限がある。それが変数qで表されている。
ということは、製造した製品すべてを売り切ることができる製品価格が最適な価格といえる。
この時の最適価格は付録の図A-1をみれば最適価格pを求めることができる。すなわち最適価格は、\(p^{-η} \hat E(a)\)と\(pq\)の交点となるpである。
\(p^{1-η} \hat E(a) = pq\)
から \( p^*= (\frac{\hat E (a)} {q})^{1/η} \)をえる。
これは変数\(\hat E (x)=p^{-η}a\)を使うと次のように書いても同じである。
\( \hat E (x) = q \) あるいは、\( \hat E (x/q) = 1 \)
以上で付録の数式(A1-1)を得た。本来の解として示されている命題1-1の(1-10)と比較することでこれは\(g^*=1\)のケースであることがわかる。蛇足ながらこのとき\(\hat E(y)=\hat E (x) =q\)の状態でもある。
活発度aの予想誤差が確立分布関数A(・)で示された場合のときの最適価格については次回の記事で求める。
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