交渉市場と定価市場、せり人不在の市場形態

社会主義モデルから資本主義モデルへ

ワルラスの市場のモデルは、ワルラスのせり人という超越者の存在が仮定されていた。

このような市場モデルは、証券取引所やそれと同類の取引であって、実際の市場に中央集権的な市場は存在しない。

ワルラスのせり人モデルは、市場の社会主義モデル(ランゲ、ラーなー)である。

この超越者のない分権的な資本主義経済のモデルを作っていく。

 

価格決定力を持っていて行使するのは誰か

潜在的には、売り手、買い手が決定力を持っている。

行使するのは、市場の構造による。

それは、不完全競争市場であって、

  1. 商品
    取引されている商品の標準化の程度
  2. 情報ネットワーク
    売り手、買い手の間での情報ネットワークの緊密さの程度
  3. 数のバランス
    売り手の数、買い手の数、売り手と買い手の間の数

などの条件によって変わるため、一義的には決定できない。

 

交渉市場

売り手と買い手がほぼ同数で、お互いに情報を交換しながら交渉し価格を決定する。

例1)経営者と労働組合の1対1の賃金交渉の形態。

例2)一次産品市場。大勢の売り手と買い手がそれぞれそれぞれ売値、買値を叫んで相対売買する形態。

この場合、売り手と買い手が現実的に、価格決定に関与している。

しかし、売り手の情報、買い手の情報が不確実な状態で交渉している。

そこで決定される価格は、売り手ごと、買い手ごと、交渉ごとで異なっている(ワルラス市場ではすべて一義的に価格が決まっていた)。

 

定価市場

価格交渉のための情報収集には莫大な時間と費用がかかる。

大勢と取引する売り手や買い手は、個々に価格交渉せず、一方的な定価を定めて取引する可能性が高い。

個別交渉による差別価格から得られる利潤は犠牲になるが、多大なる交渉の費用を節約できる。

製品市場においては、売り手企業が定価方式を定めるのが普通。

労働市場においては、仕事を求めてくる労働者に対し、定価方式で賃金を設定する。

 

不均衡動学の理論の仮定

不均衡動学の理論を構築するはじめの一歩として、下記の2点を仮定する。

  • 製品市場では売り手である企業が価格を一方的に定める。
  • 労働市場では買い手である企業が賃金を一方的に定める。

 

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