一次同次関数とはどんな関数なのか例も示すよ

一次同次関数(1次同次関数)って、実は数学ではあまり使うことのない用語です。しかし、経済学を学ぶ時には避けては通れない用語です。ここでは一次同次関数がどういう関数なのかを説明します。また、その一般系であるn次同次関数についても触れます。

一次同次とは平たく言うと、各項の次数が1次で統一されている関数という意味です。

ちなみに、一次同時ではなく、一次同次です。次数に関する性質を述べているからです。「次」の文字を使います。

一次同次関数の定義

3変数、4変数であっても同様の定義ができますが、まずよく使われる二つの変数の場合の定義を示します。

一次同次関数(2変数の場合)

変数\(K,N\)を引数に持つ関数\(F(K,N)\)が一次同次関数であるとは、
任意の実数\(a\)に対して、\[F(aK,aN)=a F(K,N)\]が成立しているということである。

一次同次関数は、経済学の生産関数で使われることが多いです。

生産関数の場合、「一次同次関数」のことを「規模に関して収穫一定である関数」とも言います。

一次同次関数の例

超簡単な例

実用性はともかく、一次同次関数の簡単な例は、

\(F(x,y)=x+y\)

です。

念のために確認してみます。

\(F(aK,aN)=aK+aN=a(K+N)\)
\(aF(K,N)=a(K+N)\)

となっていますから、

\(F(aK,aN)=aF(K,N)\)

が成立しています。

関数\(F(K,L)\)が一次同次関数かどうかを確認するには、

\(F(aK,aN)\)と\(aF(K,N)\)をそれぞれ計算してみて、同じになるかどうかで判断します。

コブダグラス関数の場合

生産関数としてよく使われる、コブダグラス関数も一次同次になる場合があります。(後で示すn次同次関数になります。)

\(F(K,L)=A \cdot K^α \cdot L^β\)

ここで\(A,α,β\)は定数です。

と表されるコブダグラス関数が一次同次かどうか調べてみます。

\(F(aK,aL)\\
=A \cdot (aK)^α \cdot (aL)^β\\
=A \cdot a^{α+β} \cdot K^α \cdot L^β\\
=a^{α+β} A \cdot K^α \cdot L^β\\
=a^{α+β} F(K,L)\)

ですから、\(α+β=1\)の場合に\(F(K,L)=A \cdot K^α \cdot L^β\)は一次同次関数となります。

コブダグラス関数のような関数の場合で、指数部分を整数に限定せず実数を許す場合は、その底であるKやLは正の実数であると暗黙に宣言されたものとして考えます。また、同次性を考える場合には、aKやaLも正の実数である必要があるため、aの値も正の実数に制限されます。

理由はごく当然で、負やゼロを許すと、実数計算の範疇を超えてしまうからです。

上記の計算より、例えば、

\(F(K,L)=A \sqrt{KL}\)

は一次同次な関数です。

n次同次関数

一次同次関数を一般的に拡張してn次同次関数の定義ができます。

n次同次関数(2変数の場合)

実数\(n\)に対して、変数\(K,N\)を引数に持つ関数\(F(K,N)\)が、
任意の実数\(a\)に対して、\[F(aK,aN)=a^n F(K,N)\]を満たしている場合、

\(F(K,N)\)はn次同次関数であると定義する。

さらに、変数の個数も一般化するとn次同次関数は下記のように定義されます。

n次同次関数(多変数の場合)

実数\(n\)に対して、m個の変数\(K_1,K_2,\cdots,K_m\)を引数に持つ関数が、
任意の実数\(a\)に対して、\[F(aK_1,aK2,\cdots,aK_m)=a^n F(K_1,K_2,\cdots,K_m)\]を満たしている場合、

\(F(K_1,K_2,\cdots,K_m)\)はn次同次関数であると定義する。

関数\(F(K_1,K_2,\cdots,K_m)\)がn次同次関数かどうかを確認するには、

\(F(aK_1,aK_2,\cdots,aK_m)\)と\(aF(K_1,K_2,\cdots,K_m)\)をそれぞれ計算してみて、同じになるかどうかで判断します。

定義から、次の性質がすぐにわかります。

n次同次関数の事を単に同次関数という事もあります。

同次関数の和と差

\(F(K_1,K_2,\cdots,K_m)\),\(G(K_1,K_2,\cdots,K_m)\)がn次同次関数であるとする。

n次同次関数の和

\(F(K_1,K_2,\cdots,K_m)+G(K_1,K_2,\cdots,K_m)\)

も、n次同次関数である。

n次同次関数の差

\(F(K_1,K_2,\cdots,K_m)-G(K_1,K_2,\cdots,K_m)\)

も、n次同次関数である。

同次関数の積と商

\(F(K_1,K_2,\cdots,K_m)\)を\(s\)次同次関数\(G(K_1,K_2,\cdots,K_m)\)を\(t\)次同次関数であるとする。

二つの同次関数の積

\(F(K_1,K_2,\cdots,K_m)*G(K_1,K_2,\cdots,K_m)\)

は、\((s+t)\)次同次関数である。

二つの同次関数の商

\(\displaystyle \frac{F(K_1,K_2,\cdots,K_m)}{G(K_1,K_2,\cdots,K_m)}\)

は、\((s-t)\)次同次関数である。

コブダグラス関数の同次性

コブ・ダグラス関数 \[A \cdot K_1^{α_1} \cdot K_2^{α_2} \cdots K_m^{α_m}\]は\((α_1+α_2+\cdots+α_m)\)次同次関数である。

上記の性質を組み合わせて、いろいろな同次関数を作ることができます。

例えば、\(K,L\)を変数とすると、

\(2K^2L+KL^2\)は3次同次関数、

\(K^2+3L^2\)は2次同次関数

\(\displaystyle \frac{2K^2L+KL^2}{K^2+3L^2}\)

は1次同次関数です。

ゼロ次同次関数

n=1の場合の同次関数が一次同次関数でありますが、n=0の場合のゼロ次もよく使われます。

改めてゼロ次関数の定義を書き直すと

ゼロ次同次関数(2変数の場合)

変数\(K,N\)を引数に持つ関数\(F(K,N)\)がゼロ次同次関数であるとは、
任意の実数\(a\)に対して、\[F(aK,aN)= F(K,N)\]が成立しているということである。

例えば、

\(\displaystyle \frac{3K}{2L}\)

\(\displaystyle \frac{KL}{K^2+L^2}\)

などがゼロ次同次関数になります。

同次関数でない関数

同次関数の例をいくつかあげましたが、逆に同次関数でない例をみることによって、より同次関数の特徴がわかりますので、いくつか同次関数でない例を挙げます。

同次関数でない関数の例

同次でない関数例

\(\displaystyle F(K,L)=K^2+3L\)
は同次関数ではありません。

まず、n=1の場合で一次同次関数なのかどうか、計算して確認してみます。

\(F(aK,aL)=(aK)^2+3(aL)=a^2K^2+3aL\)

\(aF(K,L)=a(K^2+3L)=aK^2+3aL\)

となり、\(F(aK,aL)\)と\(aF(K,L)\)は同じになりませんから、一次同次関数とは言えません。

2つの関数が等しいとは、考えられる全てのK,Lに対して関数の値が同じになる場合をいいます。

上記の\(F(K,L)\)は1次同次関数でないことはわかりましたが、2次同次関数かどうかは確認してみないとわかりません。

同様に、3次同次なのか、4次同次なのか、一般的にn次同次なのかは調べてみないとわかりません。

n次同次関数か調べてみます。

\(F(aK,aL)=(aK)^2+3(aL)=a^2K^2+3aL\)

\(a^nF(K,L)=a^n(K^2+3L)=a^nK^2+3a^nL\)

上記の2関数はnをどのように設定しても同じ関数になりません。

例えば、a=2,K=1,L=1等いくつか具体的な数を代入して2つの関数の値を計算すると、2つの関数が同じでない事がすぐに確認できます。

よって\(F(K,L)=K^2+3L\)はn次同次関数ではないと言えます。

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